日本の昔話、おとぎ話、民話

笠地蔵1 年の暮れに

年の暮れに

むかし、むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
二人は、正直で働き者でしたが、暮らしはあまり楽ではありませんでした。
とくに、その年は作物の出来が悪く、秋が過ぎ、冬になり、やがて年の暮れを迎えるころになると、食べるものも、ほとんどなくなってしまうありさまでした。
「やれやれ、これではお正月を迎えられないのう。」
「そうですねえ、いったいどうしたものですかねえ。」
せまい家の中をみまわしても、あるものといえば、少しの藁(わら)があるくらいでした。

その藁の束を見たおじいさんが、
「そうだ、この藁で、笠(かさ)をこしらえて、町に売りに行ってみようか。」
というと、
「それは、いい考えですね。」
と、おばあさんも賛成します。
おじいさんとおばあさんは、藁をつかって、その夜のうちに、5つの笠をこしらえました。
「これが売れれば、お米とお酒を買うことができるじゃろう。」


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